ハンガリーのジプシー音楽は、古くは貴族のために演奏を用いて場を盛り上げる役目を請け負っていましたが、現代ではレストランなどで演奏するバンドや、冠婚葬祭の盛り上げ役のバンドとして活動の場を得ています。演奏される音楽の裏には、古くはモーツァルトなどのクラシック音楽家に影響をあたえたほどの素晴らしい伝統的な音楽技巧があります。

古くは中世からになりますが、ハンガリージプシー音楽のルーツは、当時の王様がツィンカ・パンナという女性に、王宮のための音楽を演奏するようにと命じたのが始まりと言われています。

ツィンカ・パンナは自分の夫や親戚家族でバンドを編成し演奏をしているうちに、様々なところからお呼びがかかり大成功しました。それを見て貴族に雇われて音楽を奏でる音楽家がたくさん現れました。時代が変わり貴族が解体してからも、町の旅籠(チャールダ)等で演奏が続けられ、時には兵隊募集のための音楽を奏でたり、冠婚葬祭の折々に呼ばれて音楽を奏でたり、バンドとしての形態は脈々と続けられました。

1800年代には、ハンガリー出身の作曲家カールマン等の作品にジプシー音楽が取り上げられ、作品の上演の成功とともにヨーロッパ全体にその音楽が知られるようになり、各地のクラシック作曲家に大きな影響を与えました。1970年代頃のジプシーバンドは黄金期と呼ばれる時代、素晴らしい巨匠が活躍した時代です。
ジプシー芸術学校を設立した一人であるファルカーシュ・ジュラはそれまでも聴衆に好まれるように発展してきたハンガリージプシースタイルの演奏が更に現代の聴衆に合うようにクラシック曲をジプシー音楽にアレンジし、その音楽をジプシーの子供たちが演奏するライコーオーケストラという楽団を編成して、ヨーロッパやアメリカに何ヵ月もツアーコンサートをするという、目覚ましいジプシー音楽の発展期がありました。


ジプシー音楽家は、ハンガリーに住むロマ民族の中でも、特にハンガリーの文化に大きな貢献をしています。演奏家の中でも特にめざましい活躍をした演奏家には、政府から様々な勲章が送られています。 音楽に関係する勲章として一番大きなものはリスト・フェレンツ賞ですが、これまでにジプシー音楽家も多くの受賞者を出しています。 また、2014年3月には、ライコーオーケストラの卒業生から編成されている、「100人のジプシーオーケストラ」という大編成のジプシーオーケストラが、「フンガリクム」(ハンガリーの特産品)として国からの公式な認定を受けました。